偽島/探索11日目

2007年7月20日 偽島
 ――…しとしと…

いつもだったら、この時期は梅雨で
師匠の家のある森は薄暗い闇に覆われていた。

雨音とカエルの鳴き声を聞きながら
毎日毎日、書を書いていた日々。

「ねーねー、師匠。
 こうやって過ごす日々っていいですね。
 雨が降ると、気分が滅入ったりする人が多くなるって
 何かで読んだ事があるんですけれど
 ボクはそんな事、全然ないなー。 

 だってだって、雨が降ったらカエル沢山だし!

 あー、半紙がちょっと湿っぽくなって
 よれよれーってなっちゃうのは辛いかなー。
 墨の乗りも僅かに変わる気がしますしね。
 あ、あとは、洗濯物が乾き難いとかもあるかなぁ?」

止まる事なく喋るボクを見て、師匠がぴしゃりと

「…ボロブ。
 口より先に、手を動かしなさい。」

 ザーーー…

「ぅ、ごめんなさい。師匠。」

しょんぼりとしながらも、姿勢を正して筆を握る。
ボクの横を歩く師匠が、外の景色を見ながら呟いた。

「恵みの雨、ですね。」

 ****

「遺跡の中って、雨が降らないよね。
 …当たり前だけど。」

天井を見上げ、ぽつりと呟く。
見つめる先は、天井を越えた先にある空だったのかもしれない。

今日の天気は何だろう。

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