偽島/探索12日目

2007年7月22日 偽島
―――…ぽたり

「…っっ……ぎゃーーー!汗で滲んだーーーっ!!
 せ、せっかく良い感じで書けてたのにーーっ!!」

半紙がじわりと汗を吸い込み、そこへ広がっていく墨を見てボクは悲鳴を上げた。

「ボロブ…騒ぎすぎですよ。」

「し、師匠ー!そんな事言ったってー!
 折角自分のイメージ通りの作品が書けてると思ったのに。」

その様子を見て、師匠は宥めるかのようにボクの頭の上に、ぽん、と手を置いて

「おや。こんなにてっぺんが熱くなってますね。
 冷たい物でも食べて気分転換でもしましょうか。」

にこり、と細い目を更に細めた。
師匠の、藍色の浴衣がとても似合っていた。

外からは、蝉の鳴き声がミンミンと響いてくる。
じわりと汗が身体にも滲んだ。



「……………はぃ。」

…どうやっても、この人には敵わないんじゃないだろうか。
と、いつも思う。

梅雨も明けて、季節は本格的に夏を迎える。

 ****

出来る事なら
また
師匠と一緒に。

―――……。

 ****

「餡蜜、食べたいな。」

遺跡の中だと、食料が限られてくるのもあって
好きな食べ物が余計に恋しくなるのだろうか。

遺跡の中は、あの日よりは涼しく感じられる。

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